ゼラチンとコラーゲンの違いについて

「コラーゲンはゼラチンで取れる」といった噂があるようです。コラーゲン入りドリンクに高いお金を払う位なら、ゼリーやマシュマロを食べた方が安上がりで、良いと思われるかもしれません。しかし、物事はそこまで単純ではないのです。今回はコラーゲンとゼラチンの違いについて、構造的や、栄養などの面から詳しく見ていきます。

構造的な違い

コラーゲンとゼラチンとでは、構造的に違いがあります。以下では、コラーゲンとゼラチン、それにそれらの分解物であるコラーゲンペプチドを加えた3種類について、構造的な違いを見ていきます。

コラーゲン

コラーゲンは、人の皮膚や骨、筋肉などを構成しているたんぱく質です。体重60kgの人の場合、12kg程度のたんぱく質が存在しており、そのうち4kgはコラーゲンでだと言われています。コラーゲンは、アミノ酸が100個程度つながってできるペプチド鎖3本が、水素結合や共有結合などの助けを借りてらせん構造をとることで構成されています。アミノ酸1つの分子量は100程度(あくまでも平均)だと言われていますので、アミノ酸1000個のペプチド鎖3本で構成されるコラーゲンの分子量は、およそ300000になります。これは後で紹介するゼラチンやコラーゲンペプチドと比較してもかなり高い値となっています。

ゼラチン

ゼラチンは、先で紹介したコラーゲンを加熱するなどして細かくしたものです。コラーゲンは3本のペプチド鎖が水素結合や共有結合などをすることにより構成されていますが、加熱や酸などのストレスを与えると、この構成が細かくばらされます。これをコラーゲンの変性といいます。この変性したコラーゲンのことをゼラチンといいます。ゼラチンは、加熱した後に冷やすと、再度、部分的に3重らせん構造に戻り、固まります。このような性質を応用したのがゼリーです。ゼリーのぷるぷるとした食感は、このゼラチンによります。その他、ゼラチンは接着剤などとしても使用されており、様々な分野に応用されています。分子量は50000~200000程度とされており、コラーゲンを細かくしたゼラチンでは、分子量はコラーゲンよりも小さくなります。

コラーゲンペプチド

コラーゲンペプチドは、コラーゲンを細かくしたゼラチンを、たんぱく質を分解する酵素などにより処理し、小さくしたものです。ゼラチンは1本の長いペプチド鎖により構成されますが、それをブチブチと断片的に切ったものがコラーゲンペプチドです。化学的な組成はコラーゲンやゼラチンと同じですが、細かくなっているため、ゼラチンのように冷やすとゲル化するような性質は持っていません。分子量は2000~5000程度で、ゼラチンよりもさらに小さくなっています。最近では、このコラーゲンペプチドをさらに細かく、アミノ酸が2・3個しか結合していないようなペプチドにまで小さくしたものまで出現しています。

ゼラチンの経口摂取の効果は?

では、ここからは、ゼラチンを経口摂取しても、健康に良い効果があるのか、という点について解説していきたいと思います。ゼラチンを摂取することで、膝関節の痛みを取ることができるとの説もあります。また、コラーゲンに関するサプリメントやドリンクなどの商品は多く販売されていますので、コラーゲンを飲んで効果があるのであれば、それを分解したゼラチンを食べても効果があるのでは?と思われるのはごく自然なことだと思います。摂取するのも簡単で安上がりです。

しかし、ゼラチンを摂取して何らかの健康効果を得ることは難しいのが現状のようです。その理由は分子量にあります。コラーゲンのサプリメントやドリンクとして売られているコラーゲンは、分子量が300000もある高分子なコラーゲンではなく、コラーゲンペプチドよりも分子量を小さくしたものなのです。ゼラチンの分子量である100000よりも、さらに分子量の小さいコラーゲンが含まれているのです。では、なぜ分子量が大きいと効果を得ることが難しいのでしょうか。以下でコラーゲンの消化・吸収の観点から説明していきます。

コラーゲンやゼラチンの消化・吸収

コラーゲンやゼラチン、コラーゲンペプチドなどのたんぱく質は、口から摂取した後に消化酵素などにより分解されます。段階的に分解されていき、最終的にはアミノ酸が2-3個つながったペプチドや、単体のアミノ酸の形にまで分解されます。

この時、コラーゲンのもとになっていたたんぱく質は、分解された後でも、もともとコラーゲンであったことの痕跡を残します。コラーゲンは、その1/3がグリシンというアミノ酸により構成されており、それにプロリンやアラニン、ヒドロキシプロリンを合わせると全体の2/3にも達します。これは、コラーゲンが特有のアミノ酸配列を持っていることによります。コラーゲンのアミノ酸配列は全ての部位で、Gly-X-Yという配列をしており、一般にXにプロリン、Yにヒドロキシプロリンがきます。そのため、全体の1/3は必然的にグリシンになります。

このようなアミノ酸配列はコラーゲンに特有のものです。そのため、このアミノ酸配列を手がかりにして、体に吸収された後に再度コラーゲンとして合成されます。コラーゲンは、皮膚の乾燥重量のおよそ70%を占めるとされている成分ですので、コラーゲンを摂取することは、皮膚環境の正常化などに寄与すると考えられます。

分子量が大きいと十分な効果が得られない

となると、分子量の大きいコラーゲンやゼラチンをそのままの形で摂取しても、皮膚環境の正常化などの何らかの効果が発揮されるという結論になりますが、事態はなかなかこのようなシンプルには進みません。分子量が大きいと、分解して吸収されるまでに時間がかかってしまうために、十分な効果を発揮できないのです。さきほど紹介したところでは、コラーゲンなどの分子量は、コラーゲン>ゼラチン>コラーゲンペプチドという関係にありました。コラーゲンが最も大きく、コラーゲンペプチドが最も小さい。このうち、食べて何らかの効果が期待できるのは、より分子量を小さくしたコラーゲンペプチドです。つまり、何らかの効果を得るためには、コラーゲンペプチドの分子量(2000~5000)よりも、もっと小さくしなければならないのです。

コラーゲンの分子量が、吸収に及ぼす影響を人間で調べた研究があります[1]。この研究では、平均分子量が5000程度のコラーゲンペプチドで構成されるサンプル、分子量の小さいコラーゲントリペプチドを50%程度含んだ、分子量600程度のサンプル、コラーゲントリペプチド100%、分子量300程度のサンプルの3つを用いて、摂取後の血中や尿中に現れる、コラーゲン特有のアミノ酸配列を持ったペプチドのレベルを測定しました。

その結果、分子量の大きいコラーゲンペプチドで構成されるサンプルを摂取した人では、血液中にGly-Pro-HypやGly-Proなどのコラーゲン特有のアミノ酸配列を持ったペプチドがほとんど存在していませんでした。また、尿に排泄されたペプチドにも、コラーゲン特有のアミノ酸配列を持ったペプチドは、それほど多くは見られませんでした。このことは、コラーゲンペプチドが細かく分解され、コラーゲンであったことの証を失ったことを意味しています。

それに対して、コラーゲンペプチドよりも分子量をうんと小さくしたサンプルでは、血液中にも尿中にも、コラーゲン特有のアミノ酸配列を持ったペプチドが見られました。これだと、摂取したサンプルは、再度コラーゲンとして合成され、皮膚環境の正常化に寄与することが期待できます。

これらの結果から、コラーゲンを摂取して、なんらかの効果を期待するには、コラーゲンの分子量が少なくとも600、もっと言うなら300程度であることが望ましいということになります。ゼラチンの分子量は50000~200000はあるとされていますので、ゼラチンを摂取して、何らかの効果を得ることは難しいと言わざるを得ません。

まとめ

今回は、コラーゲンとゼラチンの違いについて、構造・栄養の面から解説しました。残念ながら、コラーゲンの代わりとして、ゼラチンを摂取しても、十分な効果を得ることは難しそうです。参考にしてください。